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愛媛大学 農学部 生命機能学科 応用生命化学コース
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● 2020年1月25日 4回生の久賀さんが、日本農芸化学会中四国支部第56回講演会で研究成果を発表しました。
● 2019年12月7~12日 M1の市村さん、佐藤さんが、ASCB/EMBO meeting 2019(ワシントンDC)で研究成果を発表しました。
● 2019年10月24~25日 M1の市村さん、佐藤さん、B4の大槻さんが、第37回YEAST WORKSHOP(熊本大学)で研究成果を発表しました。
液胞機能に関する分子レベルの総合的な理解と応用
液胞は、植物や酵母、カビなどの真核微生物の細胞内で最大の容積を占めるオルガネラで、 これらの生物のさまざまな生理的局面で重要な機能を担っています。
そのはたらきの詳細を理解し、これをコントロールすることは、有用な植物や微生物の創成に繋がると期待されます。しかし、分子・遺伝子レベルでの研究はまだまだ始まったばかりで、不明な点が多く残されています。当研究室では液胞の機能の中で、特に物質集積/物質輸送のはたらきに焦点を当て、
液胞機能の総合的な理解を目指しています。液胞の機能を分子レベルより総合的に理解することを目的として、
分子生物学、細胞生化学分野の教育と研究を行っています。特に、
液胞内外の物質の出入りに関わる膜タンパク質(トランスポーター)の働きを解明することにより、
有用代謝物質の生産性を向上させたり、環境汚染に繋がる有害物質を封じ込めたり、
環境変化に対する適応性を強化したりと、さまざまな応用が期待されます。
液胞アミノ酸トランスポーターの多様性と生理機能の解明
アミノ酸は、蛋白質合成の基質、 窒素の輸送・貯蔵体、一次・二次代謝産物前駆体として機能する生命活動に必須な栄養素です。 適正な細胞内アミノ酸レベルを維持するため、 細胞内での生合成や細胞外からの取り込みが調節されていることが以前から知られています。 私たちは細胞内アミノ酸レベルの適正な維持に液胞(右図)が重要な役割を果たしていると考えています。 特に出芽酵母では細胞全体の4割近くのアミノ酸が液胞に蓄積します。 しかしその分子基盤の理解は不十分です。
私たちは出芽酵母を材料に 液胞内外へアミノ酸を輸送するタンパク質(トランスポーター)の同定と その生理機能およびアミノ酸輸送の分子機構を解析することにより細胞内アミノ酸コンパートメントとしての 液胞の意義を明らかにしようとしています。研究対象としている酵母は、お酒やパンの製造に使われる身近な微生物です。 アミノ酸はお酒の風味や鮮度を決定づける要素であり、 その代謝経路の改良は品質向上への有効なアプローチです。 また、酵母エキスはアミノ酸豊富なサプリメントとして市販されています。 私たちは酵母のアミノ酸代謝の基礎研究を通して、有用酵母株の育種を目指しています。
糸状菌液胞アミノ酸トランスポーターの機能解明
植物病原性のカビのフザリウム菌(右図上)は、植物の根から侵入し、導管を詰まらせて植物を枯らしてしまいます(右図下)。ゲノムの解析から、フザリウム菌にも酵母と同様に液胞アミノ酸トランスポーターが存在すると推測されます。キュウリに感染して枯らしてしまうカビの一種、フザリウム菌を研究対象とし、このカビについて遺伝子工学の手法や生化学の手法を用いることによって、液胞アミノ酸トランスポーターの機能を解析しています。
参考となる研究論文: Characterization of vacuolar amino acid transporter from Fusarium oxysporum in Saccharomyces cerevisiae. Lunprom S, Pongcharoen P, Sekito T, Kawano-Kawada M, Kakinuma Y, Akiyama K. Biosci Biotechnol Biochem. 2015;79(12):1972-1979.
細菌型V-ATPaseの生理機能の解明
物質輸送、エネルギー生産、情報伝達など生体膜上では細胞活動に欠かすことの出来ない様々な反応が行われています。 多くのタンパク質がこれら生体膜の反応に関わっており、 それぞれの反応で鍵となるタンパク質を標的にした特異的なリガンドや阻害剤の探索が 医薬品の開発に繋がります。
当研究室では液胞内の酸性化に必須であるプロトンポンプ、液胞型ATPase (V-ATPase)のプロトタイプといえるタンパク質を腸内細菌Enterococcus hirae細胞膜に発見し(右図)、その構造と機能を明らかにしてきました。今後はさらに、腸内細菌におけるその生理的重要性を明らかにしようとしています。